所信表明(令和4年12月7日)

更新日:2022年12月14日

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10月30日執行の中井町長選挙におきまして、町民の皆様から望外なご支持をいただき、ここに町政運営を担うことになりました。心より感謝申し上げます。
着任からわずか3週間ですが、すでにいくつかの決断をする場面もあり、町長職の重責を感じるとともに、町民生活を守り、町の発展を推進する、使命の重さと権限の強さに改めて畏れ、厳粛に受け止めているところです。

さて、20年と少し前、わたしは自分たちの暮らしを求めて、県西県央を中心に様々な土地を経巡りました。本町を訪れた最初の日、改善センター図書室を尋ね、手に取った、平成5年刊行の「中井町勢要覧」の見返しに、こう書かれていました。

中井町は、よく「何もないところ」と言われます。
けれども、きれいな空気、豊かな自然、ゆったりとした時間の流れ、そして人々のやさしさ、現代社会で生きていく中で忘れてしまったものが、ここにはあります。

何もない町…、わたしはこの謙虚で誠実な一文を読んだとき、この町には自分たちのような者にも居場所があると直感し、深い感動と心よりの安堵を覚えました。
その後、縁あってその中井に移り住むこととなり、爾来20年、地域等での活動、そして皆様とご一緒した議員としての活動を通して、この中井を愛し、この中井の歩みを見つめてきました。

少子化、高齢化が進展し、1万だった人口は9000を切らんとしています。移動、買い物、医療、介護といった課題が切実になってきました。イノシシ等の害は広がり、東日本大震災があり、公共施設等の長寿命化が叫ばれ、地球温暖化や持続可能性、さらには新型感染症と、身近な暮らしから全球規模まで、気がつけば、この20年で様相は一変したかのようです。

30年前の町勢要覧の筆者は、こう続けます。

自然と開発が調和した、新しい形のまちに生まれ変わる可能性を秘めて、中井町は未来に向かって動き出しているのです。

「新しい形」のまちづくりを中井町も摸索して来ました。第五次中井町総合計画の前後には「美・緑」(みりょく)、さらに第六次中井町総合計画では「里都まち」(さとまち)と、中井を象徴する言葉が生まれています。
それらに呼応するように、多くの人が持ち場持ち場で地域づくり、まちづくりに取り組んでいます。そこには大ベテランもおられます。わたしのような者も、 さらに若い世代の人たち、中井っ子たちもいます。人材において、秘められた可能性が見えるようになってきました。
これからの「新しい形のまち」は、これまでの右肩上がりの時代の「まち」の「形」と大分異なります。しかし「きれいな空気、豊かな自然、ゆったりとした時間の流れ、そして人々のやさしさ」は、今もなお、この町に残されています。
皆様がご存じの通り、「何もない町」ではなく、暮らしに必要なものはすべてあります。私たちは、「新しい形のまち」、里都まち(さとまち)の可能性を追い続けましょう。

わたしは、そうしたこれからの「新しい形」の中井町の方向性とあり方を3つ の約束として表しました。

一つ目は、ミッション・果たすべき使命「ひとだすけはまちづくり、暮らす人 の幸福が一番」です。

地方創生で広がった関係人口や交流人口の視点もありますが、コロナ禍で浮き彫りになった社会の脆弱性から、「住民の福祉の増進」という、地方公共団体の基本に立ち返り、ひとだすけとまちづくりを、地域づくりと絡めながら直結させ、「暮らす人の幸福を第一に」政策をシフトしていきます。
この方向性が、結果的に人口流出を食い止め、移住・定住へとつながると確信します。まさに論語にある「近き者説(よろこ)び、遠き者来る」です。

具体的に、人口増加策では、結婚し暮らし始める人への一時金支給などで間口を広げ、仕事でも家庭でも活躍する女性を、ケアする視点から支援し、家庭内、 役場等の働く場でのジェンダーギャップの解消にも努めます。
周辺町でも取り組まれている、高校卒業までの医療費無償化にも取り組みます。子どもたちに「学んでほしい」という願いを込め、教科書代の支援、さらに町役場等でのインターンシップを導入し、中井で働ける可能性を広げます。
ネウボラの対象年齢を広げることにより、学校だけでは解決できない課題への支援にワンストップでつなぎます。外国につながりのある児童生徒へのサポ ート強化、障害を抱える方とご家族をライフステージに沿った併走型支援で支えます。
地域での乗り合いを支援し取り組む、買い物便を手始めに、高齢者の買い物、 移動対策を拡充します。認知症支援の専門性を高め、地域での生涯現役のサポートを拡充します。
防災からの自治会・地域の活性化を目指し、町民防災モニターを通して、万が一に備える意識を高め、地域や避難所等での体制作りへと進めていきます。
新型コロナウイルス感染症は後遺症など未解明です。オンライン診療等へつなぐことで対応し、全数把握が難しい中でも可能な範囲で町民への感染状況の共有に取り組みます。

二つ目は、ビジョン・実現したい未来「100%なかい、なかいの真価を、この国と世界に位置づける」です。

中井ならではの食と農、産業振興、生物多様性、また歴史文化、それらを通して中井の真価を、この国と世界に位置づけて参ります。
食と農が身近な中井ですが、農の継承は大きな課題です。まず、臨時営農支援事業で価格高騰に苦しむ農家への臨時給付に取り組みます。帰農者や新規就農者を支援し、農道維持や有害鳥獣対策により農のインフラを保全、自伐型林業を模索し、合わせて減災対策を行います。
町内事業者との連携強化により、より密着した産業振興、今年度中の認可を目指す諏訪地区においては組合や改良区を支援し、地域住民の安心安全に心を砕きます。
行政圏、生活圏が異なる特性も踏まえ、課題や行政事務ごとの広域連携に取り組みます。秦野日赤産科小児科支援、ごみ処理広域化を見据えたごみ減量化などを推進、町民負担、財政負担を軽減します。
中井の歴史文化を形にし、伝えることは私たちの大きな仕事です。震生湖誕生100年を契機に周辺整備、その後は郷土資料館等の文化事業に取り組みます。
生物多様性はこの町の大きな財産です。教育、観光も視野に保全と利活用を推進します。

そして、三つ目は、バリュー・約束する価値や強み「公僕(パブリック・サーバント)を貫く」です。

これからは公共施設の更新やインフラの維持等で財政的にも厳しい判断を迫られます。長年、検討が重ねられてきた改善センターは、改めて人と活動を前提とした機能強化で建替えに着手します。「中井町公共施設等総合管理計画」の示す目標を念頭に公共施設の長寿命化等整備に取り組みます。
これらの政策は、すでに来年度予算編成方針を通知する際、緊急性の高いもの、4年間で形にするもの、さらに中長期的に道筋をつけるものと分けて示しました。今後は担当課でそれらの制度設計等を経ながら実現可能性を高めていきます。
好循環のまちづくりを目指し、政策が互いに連携し、最小の経費で多様な効果を生み出すよう、お納めいただいた税金を適切に活用していきます。しかしながら、限られた財源の中で、財政状況を鑑み、優先順位を常に見極め、適切に予算化、政策の実現につなげます。
循環のまちづくりを支えるのは町役場です。何より温かく明るい、町民の皆様に喜ばれる、活気ある町役場を職員とともに作っていきます。そのため、「応える町政」を旗頭に、町民の皆様のお声に「迅速・正確・親身」で対応するよう徹底します。
これからはこの小さな町でも、細やかな配慮と大きな決断が求められ、それらは議会の皆様を始め、町民の皆様と練り上げていく必要があります。
透明性と応答力を備え、強い責任感を持ち、それでいて柔軟性と包摂性を持つ リーダーシップが、この町に求められていると確信します。それを公僕、パブリックサーバントという言葉に込め、自らを律し、貫いて参ります。

わたしは3期11年、議員として、皆様と共に働き、議会に育てられたと言っ ても過言ではありません。立場は異なりますが、目的は一つです。「万機公論に 決す」、熟議を通し、町政を担う両輪として、共にこの町のために尽くしたいと 存じます。
最後に改めて、議員各位には、引き続き、ご指導ご鞭撻をいただきますよう、 お願いいたしまして、以上、わたしの所信の表明とさせていただきます。

令和4年12月7日 中井町長 戸村裕司

ちょうどいい ちょっといい 里都(さと)まち なかい
戸村裕司町長の写真

中井町長 戸村裕司

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