よみがえる!中井の郷土資料 その2

舵取りの丸太
黒いバームクーヘン?
この郷土資料の大きさは一抱えほど、大人一人ではピクリとも動かないので相当な重量があります。素人目には黒いバウムクーヘンに見えますが、専門家は一目で山車(祭礼で引いたりなどする出し物の総称)の車輪と見抜きました。
そう、この資料は、五所八幡宮例大祭で引かれる町指定重要文化財「藤沢の山車と彫物」の交換した車輪です。 御神木を屋根に備えると3m以上の高さになる山車は、お囃子等を奏でる人員を乗せると総重量は何トンにもなります。木材を組み合わせ、金輪をつけるような細身の車輪では支えられず、大木の幹を使用しています。
材質は昭和中期までマツでしたが、近郊にマツの大木が無くなったため、昭和45年からケヤキに代わりました。道路がアスファルト舗装になってから車輪の減りが激しく、昭和63年にケヤキ製2代目、平成18年にケヤキ製3代目に交換されました。
郷土資料館に保存されたものは、ケヤキ製2代目となります。この車輪直径は68センチメートルあり、18年間の運行で制作時より約3センチメートルも減りました。
一目で山車の車輪と見ぬいた小林さんは、マチバ(人家や商店などが多く、町になっているところ)や城下町の大規模な祭礼の山車クラスであること、かじ取りが車輪近くに丸太を縦に入れ、「てこ」の原理で曲がる方式であることなどから、中井町の山車は格式が高いと言います。また、単に指定重要文化財を後世に残したという意味だけではなく、祭りを担う人々の祭りに対する愛情を感じることのできる一級の郷土資料であるとの評です。
文:槐真史(中井町教育委員会生涯学習参与)
監修:小林光一郎(横浜市ふるさと歴史財団・横浜市歴史博物館学芸員(民俗))
更新日:2024年11月01日