よみがえる!中井の郷土資料 その5

更新日:2025年09月08日

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カエルのイラスト
カエルのイラスト

なかいの蛙

生涯学習センターの建設に伴う、郷土資料館の移転作業が完了しました。一息つきながら改めて収蔵資料を見回してみると、民俗資料や土器などの考古資料、石碑の拓本、江戸から昭和初期の古文書など、多岐にわたる人文系資料が保管されていることに気づきました。その中で、私の専門である自然系資料は、録音内容に「中井の蛙」と記された1本の録音テープのみでした。

再生機材が手元にないため、その音を直接聞くことはできません。しかし、どんなカエルの声が録音されているのかを想像するにあたり、10年前に実施された中井町生物多様性調査の結果を参考にしてみます。この調査によると、中井町には7種のカエルが生息しており、ニホンアマガエルがもっとも普通に見られる種である一方、トウキョウダルマガエルは絶滅の危機に瀕していること、そしてモリアオガエルが他地域から持ち込まれた国内外来種であることが明らかになりました。

「カエルの声」と一言で表現しても、その種類ごとに音量やメロディーが異なります。鳥のように美しい声もあれば、低音で渋い響きのものも存在します。収録されている可能性が高い種としては、シュレーゲルアオガエル、カジカガエル、そしてかつて中井町で絶滅したトウキョウダルマガエルが挙げられます。などです。

シュレーゲルアオガエルの声はしばしば美しいと評され、初春の水田では「コロコロッ」と甲高く鳴きます。一方、カジカガエルは川辺で「フィー、フィー…」と高らかに鳴き、その声のメロディーが鹿の鳴き声に似ているため「河鹿蛙」の名が付けられました。トウキョウダルマガエルもまた、美しい声を持つことで知られています。

もしこのテープにトウキョウダルマガエルの声が収録されていれば、過去の生息状況を推測する貴重な手がかりとなるでしょう。カジカガエルの声であれば、記録がされぬまま絶滅してしまった可能性を示唆します。実は10数年前、雑色の中村川でそのような声を耳にしたことがありますが、確証を得られず記録に残すことができませんでした。そのモヤモヤを解消できるかもしれないと思うと、何とかしてテープを再生したいという思いが募ります。

機材に詳しい方からのご連絡を、心よりお待ちしております!

文:槐 真史(中井町生涯学習参与) 絵:© Supica , 2025