よみがえる!中井の郷土資料 その6

更新日:2025年09月08日

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なかいのえんじゅ
なかいのえんじゅ

なかいのえんじゅの木

中井町の天然記念物は2件あります。そのうち、令和3年に指定された「震生湖」は記憶に新しいですね。そしてもう一つが、雑色の子の神社境内に立つ「えんじゅ」です。この巨木は、樹高16メートル、幹回り8メートルを誇ります。比叡山の僧・義円が東国を行脚した際、この地に刺した杖から成長したという伝承があり、樹齢は約870年とされています。
「えんじゅ」は植物学的には県内に3種が分布しています。中国原産のエンジュ、北アメリカ原産のハリエンジュ(別名:ニセアカシア)、そして日本固有のイヌエンジュです。この中で、特にハリエンジュは明治6年に持ち込まれ、その後、河原などを中心に急速に広がりました。この植物は成長が早く、日本にもともと生えている植物(在来植物)にさまざまな影響を与えることが懸念され、「日本の侵略的外来種ワースト100」に選ばれました。
中井の「えんじゅ」を改めて調査することにしたのは、この木が地域にとって大切な存在であることに加え、形態が似ている他の種類と混同されやすいからです。そこで、実も期待できる花期の後半である8月下旬に調べました。落下した葉は長楕円形から卵形で、葉裏全体に白色毛が確認されました。また、数珠状の実や蝶形の花といった特徴で、中井の「えんじゅ」は中国原産のエンジュであることが判明しました。
現在、この巨木は大風や落雷の影響で元気を失いつつあります。それでも、地域の人々に守られながら立ち続けるその姿には、厳かさとともに、ほっこりとした温かみを感じさせる魅力があります。これから花の季節に入りますので、ぜひ役場の駐車場を利用し、ウオーキングがてら訪れてみてください。巨木を見上げれば、きっと心が優しく包まれるような気持ちになるはずです。
@photo Cap :上:樹形。下右:実、下左:花(黒色線は1センチメートル)©Masashi Enju.2025

文・写真 槐 真史 (中井町教育委員会 生涯学習参与)