よみがえる!中井の郷土資料 その8

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| 小川酒店の屋号 | 小川酒店のシリアルナンバー |
通い徳利~郷土資料から分かること2
かつて庶民が苗字を自由に名乗れなかった時代、同じ地区に同じ苗字を持つ人が多く住んでいたため、家の単位で区別するため「屋号」が使われていました。屋号は一族や家の特徴を表すもので、記号や紋章の場合もありました。明治以降は、商店の名称としても使われるようになります。
屋号が記された「通い徳利」は、顧客に貸し出していた店舗名入りの容器と言えます。「∧岸(ヤマギシ)」や「┓タ(カネタ)」など、記号化された屋号には意味があります。元町文化財保護委員の石黒弘さんによれば、「ヤマギシ」は中村屋の経営者名、「カネタ」は小川酒店が田中地区にあったことにそれぞれ由来するとのことです。
また、小川酒店の徳利には「292」を示す漢数字・弐百九拾弐が記されていました。「日本民具辞典」によると、こうした数字は店舗所在地の番地かシリアルナンバー(通し番号)であることが多いそうです。「292」は、店舗所在の番地とは違うことが分かったので、シリアルナンバーだった可能性が高いです。貸し出し管理のために記された数字であれば、小川酒店の通い徳利が複数あると見当がつきます。どなたかお持ちの方はいらっしゃいませんか?
通い徳利は消耗品であり、意図的に保存されなければ後世に残りません。屋号の意味や所在地なども、人々の記憶に頼るだけではいずれ失われてしまいます。整備の進む「新しい生涯学習施設」は、地域の物と記憶を未来へつなぐ役割も担っています。通い徳利に刻まれた記号や数字、人々の記憶は、地域の人々の営みを伝える証しです。残す、記す、そして展示や研究で活かす場として「新しい生涯学習施設」への期待が高まります。
文:槐真史(中井町教育委員会生涯学習参与)
閲:大野一郎(あつぎ郷土博物館・学芸員)






更新日:2026年03月10日