ちょうちょう発し その24 2025年12月
ああダンプ街道
中村小学校で読み聞かせを12年間続けてきました。
6年生に向けて読んだのは、芥川龍之介の『トロッコ』という短編(百年以上前の小田原―熱海間の軽便鉄道が舞台)と、もうひとつ、『ああダンプ街道』(佐久間充著、岩波新書)からの一文です。
砂利採取が最盛期だった頃の中井町の様子が描かれています。
高度成長期、建築資材などに使われる砂や砂利を採取場から運ぶダンプ街道は、全国に7000近くあり、40年前、昭和59年に出版された本書では、交通問題などが、運転手の実情も踏まえ、多角的にルポされています。
その問題解決に繋がっている先進事例として、中井町が取り上げられました。
読み聞かせで6年生に「中井町について書かれた本ってあると思う」と尋ねると、たいてい「ない」と即答。そこで、本書の「型破り巡査の奮戦―神奈川県中井町」という文章を読み始めると、子どもたちは驚きます。
「まわりは田んぼで、前は県道を挟んで小川が流れており、後ろの高台には学校らしきものが見える」。
あれっ、みんなの学校も出てきます。
元中村駐在だった高橋昭一さんの町内赴任から始まるこの物語は、高橋さんの活動を軸に、骨材協同組合、ダンプカーの運転手の砂利販売組合や松田署、町などの連携が描かれます。
組合により運賃が一定になり、運転手同士の競争がなくなり、安全優先の形が整いました。
過積載で山のように積まれた砂利は水平に積まれ、シートカバーを前後左右「拝み合わせ」て覆うことで、砂利は飛び出さなくなり、後続車への被害も無くなりました。
これは「中井方式」と呼ばれ、結果的にダンプは傷みも軽減され、長く乗れるようになり、運転手の暮らしの安定に繋がり、中井は「ダンプの理想郷」と呼ばれました。
時を経て、コロナ禍の令和3年、わたしは町社会教育委員会議がオンラインで開催した里都まちブックピクニックのため、千葉市に佐久間さんを訪ね、当時の話を聞きました。
佐久間さんは女子栄養大学名誉教授で保健社会学が専門でしたが、自分の故郷、千葉県君津市がダンプ公害に苦しむことから、全国調査に乗り出しました。
その模様は高橋さんの証言も含め、動画にまとめました。
中井の人と歴史が紡いできた物語を引き続き探していきたいと思います。
https://youtu.be/VLSuHi0CXBc
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更新日:2025年12月01日